自己破産した際、官報に掲載される期間はいつまでか、わかりやすく解説します。破産手続きから2か月後に官報に掲載され、ネットにて無料で閲覧できる期間は30日間となっています。有料サービスや紙媒体においては、掲載期間というものはなくずっと保管されます。官報に個人情報が載ることで周囲に破産のことが知られてしまうおそれは殆どありません。
目次
自己破産した場合いつからいつまで官報に載るのか?
官報は、国が国民に向けて告知すべき内容をまとめた広報誌です。自己破産して官報に個人情報が掲載された場合、ネットにて無料で閲覧できるのは発行後30日間だけです。他方、有料サービスや紙媒体の官報については、一定期間で破棄されるということはなく、ずっと保存され続けます。
・掲載時期
自己破産をした場合、官報には2回にわたって、破産者の氏名や住所などの個人情報が掲載されることになります。掲載のタイミングとしては、(1)破産手続きの開始決定が出た後(2)免責決定が出た後、の二つです。一般的には、(1)(2)の決定が出た2か月後に、官報に掲載されると言われています。
・掲載媒体と掲載期間
官報の内容は紙媒体だけではなく、ホームページで確認することができます。ネット上の官報の掲載期間については、以下の二種類があります。
無料閲覧…「インターネット版官報(https://kanpou.npb.go.jp/)」にて、掲載後30日分の情報を、いつでもだれでも閲覧することができます。
有料閲覧…「官報情報検索サービス(https://search.npb.go.jp/guide/introduce.html)」に申し込めば、1947年(昭和22年)5月3日以降のすべての官報を閲覧することができます。利用料金は月額2,200円(税込)となっています。(※2021年1月3日現在)
したがって、無料で誰でも閲覧できる期間は掲載後30日で終了しますが、お金を払えば、掲載期間の定めはなく、いつまでも見られることになります。
・掲載料
また、官報に掲載される際は、1万円~1万9,000円の掲載料をとられます。破産した人が掲載を望んだわけでもないのに、掲載料まで取られるのは納得がいかないと思いますが、自己破産をするうえで必須の手続きとなっています。
自己破産すると官報にはどんな情報が載るのか
自己破産には「管財事件」と「同時廃止」という二つの手続きがあり、90%以上の人が「同時廃止」という手続きを取ります。同時廃止の場合、官報には以下の情報が掲載されます。
(1)破産手続き開始決定後
- 事件番号
- 住所
- 名前
- 決定年月日
- 主文(同時廃止による破産手続きの開始)
- 理由の要旨
- 免責意見申述期間
- 裁判所名
(2)免責決定が出た後
- 事件番号
- 住所
- 名前
- 決定年月日
- 主文(免責の許可)
- 裁判所名
「管財事件」となった場合は、官報に載る内容は異なりますが、住所・氏名・自己破産をした旨が掲載されることや、掲載のタイミングには変わりありません。
また、自己破産手続きをしたものの、免責が認められなかった場合でも、破産手続き開始決定後、1度は官報に掲載されることになります。
官報に掲載された内容の削除や取り消しはできる?
官報に1度掲載された破産者情報を削除したり、掲載を取り消したりすることはできません。無料で見られる期間を過ぎた後も、有料のサイトや紙媒体に保存された情報は、その後もずっと保管され続けることになります。
もっとも、後述しますが、官報に掲載される情報は膨大であるうえに、ごく一部の職業の人たちを除いて、毎号官報をチェックしている人というのはほとんど存在しません。官報の情報は、削除できなくとも、官報掲載をきっかけに自分の周囲の人に自己破産したことが知れ渡る可能性は非常に低いと言えます。
官報に掲載された個人情報はネットで検索できる?
官報に掲載される破産者の個人情報は、テキストとしてではなく、画像データとして保存されます。そのため、検索サイトで破産者の住所氏名を検索したり、テキスト情報としてデータを収集したりすることは不可能になっています。
また、今後、画像データから個人情報のみを抜き取って収集できる技術が開発されたとしても、そのデータがネット検索できるようになるリスクは低いです。なぜなら、国の方針として、破産者情報を官報以外のネット媒体に転載することは違法であるとの見解が発表されているからです。
かつては、破産者の個人情報を収集して、誰でも検索可能な状態で公開するサイトが開設されていたことがありました。しかし、そうしたサイトを規制する動きが起き、現在では、破産者情報を勝手に収集されて、官報以外のサイトに公開される恐れは低くなっています。
官報に掲載された際の日常生活への影響
官報に個人情報が掲載されることにより、日常生活への影響はほとんどありません。官報掲載をきっかけに友人や知人、職場に自己破産したことを知られてしまうおそれはとても低いといえます。ただし、貸金業者や銀行等の金融機関、不動産業者などは官報をチェックしていることがあります。また、闇金業者からのダイレクトメールが届くことがあり、こうした業者の誘いに乗ってお金を借りないことが大切です。
・なぜ、友人や知人にはばれないのか
一般の方で、一度でも官報を読んだことがあるという方自体が少ないでしょう。ましてや、官報は、行政機関の休日以外は毎日発行されている機関誌で、自己破産の個人情報が掲載される号外は100ページを超えることもあります。このような情報を毎号全てチェックしている一般人はほとんどいないと考えられます。森の中では木の葉が埋もれてしまうように、大量の情報の中では、一人の破産者の個人情報は埋もれてしまいます。
また、前述したように、破産者情報を収集して公開するサイトは違法とされていますので、興味本位で破産者の個人情報を検索した知人に、破産したことがばれてしまうおそれもありません。
また、仮に興味本位で官報の公式サイトの破産者情報をチェックしている人がいたとしても、無料で掲載される30日間を過ぎてしまえば、閲覧はできなくなります。どうしても見たければ2,200円支払えば過去の情報も読むことができますが、興味本位の人が、月額2,200円を支払ってまで、過去の官報を読み漁ることはないでしょう。
・官報に載っても載らなくても、債務整理は金融機関にはばれてしまう
金融機関や貸金業者、クレジットカード会社と言った、お金の貸し借りや立て替え払いを業務とする会社は、官報とは別に、お金の貸し借りの情報を記録する「信用情報機関」という組織の記録を参照することができます。自己破産を行うと、この信用情報機関の記録に記録が残ってしまうため、一定期間、お金を借りたり、クレジットカードを利用したりすることができなくなります。
信用情報機関に掲載される情報は、自己破産や個人再生といった、裁判所を通した債務整理手続きのほかに、弁護士を通した私的な手続きである任意整理や、3ヶ月以上の借金返済の遅延情報も含まれます。
自己破産に限らず、債務整理をすれば信用情報機関に情報が載ってしまう以上、それ以外に官報に掲載されることで新たに生じるデメリットというのはあまりありません。
信用情報機関の情報は、厳しく管理され、閲覧が制限されています。お金の貸し借りやクレジットカードの作成等の際以外は業者にも閲覧できません。信用情報機関の記録に残ったとしても、周囲に自己破産の事実が知られるおそれはありません。
・個人が破産したことをむやみに言いふらすと罰せられる可能性がある
仕事で自己破産の情報を手に入れたり、あるいはたまたま読んだ官報で、知り合いの自己破産の事実を知ったとしても、それを悪意や面白半分で周囲に言いふらしたり、インターネットの掲示板やSNSなどで拡散したりすると、刑事罰の対象になる可能性があります。
自己破産した個人や法人の情報を、必要性もないのにむやみに漏洩したり拡散したりする行為は、刑法の名誉棄損罪や、個人情報保護法に違反するおそれがあります。
名誉棄損罪は、言いふらした内容が事実であっても、人の名誉を傷つける内容であれば成立します。もっとも、例外的に、公共性があったり、公益をはかったりする目的であれば、名誉棄損に当たらないケースがあります。しかし、すでに官報で利害関係人への周知を図る目的で公にされている情報を、個人がことさらに拡散させることについては、公共性や公益性は認められにくいと考えられます。
また、業務で手に入れた情報について、不当な取り扱いをすることは、個人情報保護法違反になります。こうしたリスクを冒してまで、破産者情報を公開する可能性は低いでしよう。
そもそも官報の役割とは?
官報は、法律の公布など、国からの様々な情報を国民に伝えるために創刊された機関誌で、その歴史は明治16年(1883年)ととても古いものです。現在は、内閣府が、行政機関の休日以外は原則として毎日発行しています。政党の機関誌のように、特定の主義・主張を書くような内容ではありません。
官報に掲載される内容は、法律、政令、条約等の公布が最も重要ですが、大臣や各省庁などの人事異動、国に貢献した人物に対する叙位・叙勲・褒章など、ポジティブな情報も掲載されています。こうした多岐にわたる情報の一つに、破産者に関する情報が含まれています。
かつては、国から国民への情報の伝達手段が限られていました。しかし、マスメディアの発達により、新聞やテレビが国民に関心の高い内容をピックアップして報道するため、官報を直接手に取って読もうとする国民はほとんどいないのが実情です。
なぜ、破産者情報が官報に掲載されるのか?
自己破産の際は、すべての利害関係人が破産の事実を知ることができる状態にして、手続きの公平性を確保するために、官報に個人情報が掲載されます。決して、見せしめや懲罰の目的で個人情報を公に晒すという趣旨ではありません。
破産とは、破産者が背負っていた借金を持っている財産で清算し、それでも払いきれない分を帳消しにするための手続きです。お金を貸した人(債権者)にとっては、お金の大半がかえって来ないので、とても影響が大きい手続きです。そのため、原則としてすべての債権者や利害関係人に破産の事実を知らせなければ、公平とは言えません。
破産者は全ての債権者のリストを作って裁判所に申告しますが、債権者の数が多い場合、申告漏れが出るおそれがあります。そのため、裁判所は官報に破産者の住所や氏名を公表し、世の中の人が誰もが破産の事実を知ることができる状態にして、利害関係人に対する公正を図ろうとする趣旨となっています。
とはいえ、実際には、自分がお金を貸した人が破産をしたかどうかと、毎日官報をチェックしている人はほとんどいないでしょう。
官報に名前が掲載された際の具体的なデメリット
もっとも大きなデメリットは、闇金業者などの違法な金貸しが官報の情報をチェックして、破産者にダイレクトメールを送るなど、融資の勧誘をしてくることです。自己破産をすると、7~10年にわたって、合法的な金融機関や貸金業者から、新たな借り入れをすることが難しくなります。お金が足りなくて困っていると、こうした違法業者からお金を借りたいと思うかもしれません。
しかしながら、違法な業者からお金を借りてはいけませんし、借りてしまえば法外な利息や悪質な取り立てなど、犯罪の被害に遭ってしまいます。自己破産後に、やむをえない事情でお金に困った場合は、お住いの地方自治体などに相談するようにし、違法な業者からお金を借りることのないようにしましょう。
官報の破産者情報を検索できるサイトが違法となった経緯
2019年3月に、「破産者マップ」という、オンラインの地図上に破産した人の情報が表示されるサイトが公開され、大きな問題になりました。破産者マップをはじめとする、破産者の情報を検索したり、わかり易く表示したりする破産者情報サイトは、政府の個人情報保護委員会の行政指導により閉鎖になっています。
「破産者マップ」は、官報に掲載された情報をプログラムにより収集してデータベース化し、Google の位置情報サービス「Googleマップ」に関連付けることにより、地図上に破産者の住所や氏名が表示されるというサイトでした。
このサイトにアクセスして自分の住んでいるところを調べれば、近所に破産した人がいるかどうかがすぐにわかってしまいます。官報に掲載されることに比べて、興味本位でアクセスすることが予想され、破産者の名誉やプライバシーを侵害するとして問題になりました。また、こうしたサイトから情報を削除すると言って、破産者から金をだまし取る詐欺事件も発生しました。
日本弁護士連合会は、破産者情報の拡散防止措置を求める意見書を国に提出、被害対策弁護団が結成される事態になりました。このような事態を受け、政府の個人情報保護委員会は、破産者情報サイトは個人情報保護に違反するとの見解を示し、サイト運営者に行政指導を行いました。当該サイトはこれにより閉鎖されました。