
引き直し計算を行えば、あなたの借金の本当の残額がわかります!
専門家に聞く前に、自分の借金がいくらくらいなのか、ざっと計算してみませんか?
引き直し計算はどうやるのか、基本をわかりやすく紹介します。
引き直し計算とは
引き直し計算とは、債務者が貸金業者に法律で定められている上限を超えた金利で利息を払っていた場合、法律上認められた利息の上限額でもう一度計算し直して、払いすぎている利息分を元本に充当するという計算です。払いすぎた利息が元本を充当してもなお余る場合、貸金業者に過払い金返還訴訟を起こすことが可能になります。
かつては、金利20%を上限とする「利息制限法」と、金利29.2%を上限とする「出資法」という二つの法律がそれぞれ矛盾する法規制を定めていたため、20%と29.2%の間の金利(いわゆるグレーゾーン金利)で貸し付ける貸金業者が多数あり、問題になっていました。
2010年に出資法や貸金業法が改正され、このグレーゾーン金利の問題は解消されました。
また、過去に20%以上の金利で貸し付けていたものは違法であり無効だ、とする最高裁判決が出たことにより、過去に払いすぎてしまった利息分を取り返せることになりました。
これにより、長期間借金返済を続けていた方などは、引き直し計算を行って借金を大幅に減らせる可能性があるのです。
引き直し計算が必要ない場合
専門家に任意整理を依頼すると、引き直し計算をやってくれます。しかし、専門家に相談する前に、実際自分の場合、いくらくらい借金が減るのか計算してみたいと考えられる方もいるでしょう。
まず、ご自身の借金について、引き直し計算が必要かどうか、判断する必要があります。
・モビットやオリックス、アットローン、キャッシュワンといった一部の消費者金融やクレジットカード会社は、もともと利息制限法の範囲内の金利で貸していた企業ですので、引き直しによる減額はできません。銀行からの借り入れも、銀行は元々グレーゾーン金利では貸し出していませんので、同様に引き直し計算の必要はありません。
・貸金業法が改正されて以降(2008年以降)は、どの業者でも過払い利息は発生しません(違法なヤミ金業者を除く)。従って引き直し計算の必要はありません。
ご自身の借金の場合はどうでしたか?
もし、「グレーゾーン金利で借りた引き直し計算が必要なケースかもしれない」ということであれば、次に進んで下さい。
引き直し計算を始める前に
引き直し計算を始める前に、いくつか注意しておくべきポイントがあります。
・最初に借りてから、取引期間が長いほど、過剰な金利を払い続けることになるので、結果として減額される借金も大きくなります。
・途中で完済して再度借りた場合でも、一番最初の取引から計算するのが基本です。
・引き直し計算の際は、借り入れと返済の正確な期日と金額を踏まえる必要があります。
具体的に計算してみよう
それでは、実際の借金が引き直し計算によっていくら減るのか、基本的な事例で計算してみましょう。
【ケース・スタディ】Xさんは120万円を年利29.2%で貸金業者から借りました。日々の返済額は5万5000円で、遅滞なく毎月の支払いを続けたとします。
・引き直し計算をしない場合
この借金で発生する利息は、一か月あたり、
120万円×29.2%÷12か月=2万9200円
となります。
Xさんは一年間返済を続けました。すると、一か月に返済する元本は、5万5000円から2万9200円を差し引いて月々2万5800円となります。
つまり、一年間返済を続けても、2万5800円×12か月で、30万9600円しか元本が減っていません。
三年返済を続けた場合、30万9600円×3年で、92万8800円の元本を返済したことになり、まだ27万1200円の元本が残っています。
・引き直し計算をした場合
次に、利息制限法に基づく合法的な利息で引き直し計算を行ってみましょう。
利息制限法では、100万円以上の貸付金は15%の金利が上限となりますので、合法的な利息は、一か月あたり、
120万円×15%÷12か月=1万5000円
となります。
一か月に返済する元本は、5万5000円から1万5000円を差し引いて月々4万円となります。
一年間返済を続けると、4万円×12か月で、48万円の元本を返済したことになります。
三年返済を続けた場合、48×3年で、144万円を貸金業者に払ったことになり、元本の120万円を完済しているうえ、24万円の過払い利息を業者に請求できることになります。
自分で引き直し計算できるかな?
上の例のように、借金した貸金業者が一社だけで、借り入れも一度だけといったシンプルな事例であれば、自分で計算するのも難しくはありません。
しかし、実際は複数の貸金業者と取引があったり、返済しながら借り入れを行っているようなケースも多いので、計算は複雑になってきます。
また、過去の取引履歴や明細、契約書の類をすべて保管していればいいのですが、紛失してしまった場合などは、貸金業者に「取引履歴の開示請求」を行い、過去の取引の履歴を開示してもらう必要があります。
このように、引き直し計算は借主一人で行うよりも、弁護士や司法書士などの専門家に相談して、引き直し計算を依頼するほうがいいでしょう。