過払い金請求を考えているが、メリットとデメリットを知りたい人に、過払い金請求で損をしないためのポイントをまとめました。過払い金請求をする際のメリット・デメリットは、返済中か完済後か、弁護士に依頼するのか自分で行うのかによっても異なります。
過払い金を請求したほうがいいか判断に迷っている方に、わかりやすく解説します。
目次
過払い金請求のメリット・デメリット
【メリット】
払いすぎたお金が返ってくる
最大のメリットは、法律上本当は払わなくてもよかったはずのお金を取り戻せることです。借金額や返済期間が長く、支払った利息の額が多いほど多くのお金を取り戻すことができます。
かえってきたお金を別の借金の返済に充てたり、生活資金に回すことができます。
完済していればデメリットがほぼない
過払い金を請求する業者への借金が完済している場合、信用情報機関に記録が残ることもなく、他の業者や金融機関からお金を借りることも自由にできます。
完済している借金の中に過払い金があるかも?と思ったら、お早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
【デメリット】
過払い金請求をした業者からお金を借りられなくなる
返済中・完済済みの両方とも、過払い金請求をした業者の内部データには「過払い金請求をした客」という記録が残ってしまいます。
そのため、同じ業者から再び新たな借金をすることは難しくなります。
完済している場合、時効による期限がある
過払い金の請求権は完済から10年後に時効で消滅します。そのため、いつまでに完済したのかを調べる手間がかかります。
また、期限が迫っている場合は急いで手続きを行わなくてはなりません。
借金返済中の場合、信用情報機関に記録が残る可能性がある
過払い金請求を行う業者に借金を返済中の場合、残っている借金額が過払い金よりも多いと、いわゆるブラックリストに載ってしまう可能性があります。
ブラックリストとは信用情報機関に債務整理の記録が残ることで、記録が残っている一定期間は、ほとんどの金融機関や業者などからの新たな借り入れが難しくなります。
そもそも過払い金とは?
過払い金とは、正確には「過払い利息」のことです。借金には元本のほかに、利息を付けて返さなくてはなりません。
かつては、その利息を「利息制限法」が定めた20%より多くとることが事実上まかり通っていました。
しかし、法律の改正により、利息制限法を超える金利の利息を取ることは違法となりました。また、払いすぎた利息は過去にさかのぼって貸金業者に請求できるようになったため、過払い請求が可能となりました。
過払い金請求の仕組み
利息を規制する法律には「利息制限法」と「出資法」の2種類があり、かつては出資法が29.2%を上限金利としていたことから、多くの貸金業者がこの出資法の上限金利ギリギリまで利息を取っていました。「利息制限法では違法だが、出資法では合法」という金利のことをグレーゾーン金利と呼んでいました。
2010年6月に貸金業法と出資法が改正され、出資法が利息制限法と同等の金利に引き下げられたことから、それ以降はグレーゾーン金利で貸し出すことはできなくなりました。
しかし、かつてグレーゾーン金利で貸し出していた貸金業者に対しては、過去に完済した借金であっても、払いすぎた利息を返すように請求できます。
貸金業者がグレーゾーン金利でお金を貸していたのはいつまで?
多くの貸金業者が、法律の改正を見越して、2007年ごろの借入を最後にグレーゾーン金利でお金を貸すことをストップしています。
そのため、2007年~2010年ごろの借金に関しては、グレーゾーン金利である場合とそうでない場合があります。
【2007年にグレーゾーン金利で貸し出すのをやめた主な貸金業者】
- アコム・・・2007年6月19日
- アイフル・・・2007年8月2日
- レイク・・・2007年12月3日
- プロミス・・・2007年12月20日
にグレーゾーン金利での貸し出しをやめています。
過払い金請求のデメリット~二つの「ブラックリスト」掲載に注意!
過払い請求を行うと、二つの「ブラックリスト」に載ってしまう可能性があります。「貸金業者の顧客リスト」と「信用情報機関の記録」です。
「貸金業者の顧客リスト」
一つ目は過払い金請求を行う対象の業者の内部にある顧客リストで、過払い金請求を行うと、返済中・完済後にかかわらずこのブラックリストには100%載ってしまいます。
そのため、この業者や、この業者と同じ系列の貸金業者から再び新たな借り入れを行うことは難しくなります。
とはいえ、このブラックリストのみならば、他の貸金業者や金融機関からお金を借りることに支障はないため、ほとんどデメリットにはならないといえます。
注意点といえば、クレジットカード業者の場合、そのカードが使えなくなります。公共料金の振り込みなどをそのカードで行っていた場合は、別のカードで行うよう手続きする必要があります。
「信用情報機関の記録」
二つ目は、信用情報機関のデータに事故情報として残ってしまうケースです。一般的にこちらの記録をブラックリストと呼んでいます。以下の条件に二つとも当てはまる場合のみ、このブラックリストに載ってしまいます。
- 過払い金請求を行う業者に借金を返済中であること
- 過払い金の額より残っている借金の金額が大きいこと
このように、信用情報機関のブラックリストに載ってしまうケースは限定的ですが、当てはまる場合はそれなりに大きなデメリットが発生します。
そのデメリットとは、過払い金請求を行った業者だけではなく、通常の金融機関や、別系列の貸金業者から新たな借り入れをすることが困難になることです。
また、新たにクレジットカードを作ることもできなくなります。通常は5年間このデメリットが続きます。
貸金業者に請求する過払い金の額より、残っている借金の額が多いと、借金を過払い金で相殺するという扱いになり、貸金業者と交渉して借金の金額を減らす「任意整理」になってしまいます。そうすると、その記録が信用情報機関に記載されてしまいます。
なお、残っている借金の額より過払い金の額のほうが多い場合は、借金を過払い金で返済し、さらに余ったお金を返してほしいということができます。
この場合は、ブラックリストに掲載されることはありません。
※信用情報機関とは
信用情報機関とは、加盟している金融機関や貸金業者が、顧客の「お金の借り入れやクレジットカードの利用」に関する情報を登録し、共有するための組織です。
金融機関や貸金業者は、新たな融資の申し込みがあった際、信用情報機関に登録されている情報を参照して、融資をする際の参考にします。「借金返済が3ヶ月以上滞納」や「債務整理」などの情報が残っていると、融資をしないと判断します。
信用情報機関は国内に3つあり、国に認められている合法的な機関です。「ブラックリスト」というと怪しげな機関を想像してしまいますが、お金を借りたことがある人ならだれでもかかわりがある機関ですのでご安心ください。
過払い金請求のメリット
最大のメリットは、請求者が大きな不利益を受けることなくお金を取り戻せることです。
ブラックリストに載ってしまうケースを除いて、デメリットはほとんどありません。
特に借入額や返済期間が長かったケースに関しては、高額の過払い金が発生している可能性がありますので、時効にならないうちに早めに請求を行いましょう。
また、ブラックリストに記録が残ってしまうケースでも、重たい月々の借金の負担を減らすことができますので、弁護士に相談してみましょう。
完済後と返済中、状況ごとの過払い金請求のメリットとデメリット
【完済後の過払い金請求】
完済後のメリット
完済後に過払い金請求するメリットは、請求者に不利益がほとんどなく、お金を返してもらえることです。
完済後のデメリット
完済後に過払い金請求をするデメリットは、調査の手間が生じることです。過払い金請求の権利は完済してから10年で時効にかかります。
2007年1月10日に借金をして、2012年1月10日に完済したという場合、時効は2022年1月10日になります。
しかし、何年も前に完済した借金について、正確な返済の日付を記録している人も少ないでしょう。そのため、正確な契約内容や完済日がいつだったかを調査する必要があります。
契約書を無くしてしまっていても、貸金業者から取引履歴を取り寄せることで調査が可能です。また、どの貸金業者に借金をしたか忘れてしまっていても、信用情報機関に問い合わせをすることで調査することができます。
調査は個人でも可能ですが、専門家に依頼したほうがよりスピーディーで確実です。完済した借金の場合、時効が迫っているケースも多いので、心当たりがある方は早めに調査を依頼しましょう。
【返済中の過払い金請求】
返済中のメリット
借金と過払い金を相殺することにより、借金額をゼロにでき、さらには余った分を返還請求できるケースがあります。借金の額が多くても、月々の借金の負担を軽減することができます。
また、借金の負担が大きく、3ヶ月以上返済を滞納してしまっているケースでは、すでに信用情報機関に事故情報として登録されてしまっています。
この場合、過払い金請求をすることで新たなデメリットは生じません。早めに専門家に連絡し、任意整理の手続きをとることをお勧めします。
返済中のデメリット
借金返済中で過払い金の額よりも借金額が大きい場合は、「任意整理」という扱いになり、信用情報機関のブラックリストに掲載されてしまいます。
過払い金請求の注意点
時効前に調査と手続きを行うこと
貸金業者がグレーゾーン金利でお金を貸し付けていたのは2007年以前、遅くとも2010年6月までです。
それ以降は、すべての合法的な貸金業者が利息制限法の範囲内の金利に変更しています。過払い金請求の権利は借金完済後10年で消滅するので、時効になってしまう前に調査と請求手続きを行いましょう。
請求金額によっては調査や請求の手間のほうが大きい
少額の借り入れでは請求できる過払い金の額も少なくなります。業者や信用情報機関への調査や、請求金額確定のための引き直し計算にかかる手間や費用を考えると、数万円程度の過払い金の場合は割に合わないかもしれません。
自分で手続きするメリットとデメリット
過払い金請求は自分で計算して業者に請求することも可能です。しかし、一人で行う際には様々なデメリットが発生します。
自分で請求するメリット
自分で請求するメリットとしては、専門家に手数料を支払う必要がなく、取り戻した過払い金を全額自分のものにできることです。
自分で請求するデメリット
専門家を通さず自分一人で手続きすると、手続きの際に不利になることがあります。
例えば、業者から取引履歴を取り寄せる際、専門家を通さないと後回しにされ、取引履歴の送付が遅れることがあります。
時効が迫っているケースではこれは大きなデメリットとなります。
また、業者は過払い金を少なくなる交渉を行ってきたり、過払い金返還の期日を遅らせようとすることがあります。一人で手続きをすると、専門家を通すよりも戻ってくる過払い金が少なくなるケースも多いのが実情です。
弁護士に依頼するメリットとデメリット
過払い金請求は専門家に依頼するのが一般的で、かつ、安心です。過払い金請求の専門家には司法書士と弁護士がありますが、過払い金額が大きい場合や、訴訟を考えている場合は、弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士に依頼するメリット
最大のメリットは、取引履歴の請求や引き直し計算、請求書の作成や業者との交渉をすべて代行してくれることです。また、一人で業者と交渉するときのように足元を見られることもなく、返ってくる過払い金が多くなります。
請求する金額が多いほど、弁護士に頼むメリットが大きくなります。
ただし、弁護士にも得意分野と不得意分野がありますので、過払い金請求を得意とする弁護士に依頼しましょう。
また、借金を滞納していた場合、弁護士に依頼することで督促をストップすることができます。
弁護士に依頼するデメリット
弁護士に依頼すると手数料を取られます。過払い金の請求金額が少ない場合、手数料を差し引くと、依頼者のもとに戻るお金がわずかになってしまいます。
任意交渉・裁判のメリットとデメリット
過払い金請求には、裁判所を通さないで話し合いで解決する「任意交渉」と、訴訟を起こす「裁判」の二つのやり方があります。以下に、それぞれのメリットとデメリットをまとめました。
基本的には、請求金額が多く満額に近い額を勝ち取りたい場合は訴訟を起こし、早く過払い金を返してほしい場合は任意交渉となるケースが多いでしよう。
【任意交渉】
任意交渉のメリット
裁判よりも短期間で交渉が終わり、過払い金が早く返ってきます。また、裁判には別途費用が掛かりますが、任意交渉ならば最低限の費用で済ますことができます。
任意交渉のデメリット
任意交渉の場合、返ってくる過払い金は弁護士を通しても8~9割程度の金額になることが一般的です。できるだけ多くの金額を勝ち取りたいという人には裁判がお勧めです。
【裁判】
裁判のメリット
取り戻せる過払い金の金額が多くなります。満額に加え5%の利息をつけて請求できるケースもあります。過払い金の総額が多い場合は、訴訟費用や弁護士費用を差し引いても、訴訟を起こす価値があるでしょう。
裁判のデメリット
裁判には裁判費用が発生します。また、弁護士費用も裁判を起こすほうが高額となります。訴訟による解決には時間もかかるため、一刻も早く過払い金を取り戻したいという方には向いていません。
まとめ
過払い金請求は、「いついくら、どこの業者から借りたのか」「返済中か、返済後か」といった、それぞれの事情によってメリットやデメリットが異なってきます。
まずは、ご自身のケースについて、無料相談を行っている弁護士に問い合わせされてみることをお勧めします。
過払い金請求のメリットが感じられない場合は、相談だけで依頼をしなくても問題はありません。気になる借金があれば、時効になる前に相談してみましょう。