
任意整理のメリットは取り立てを止められること。
精神的に落ち着いた状態で借金返済について考えていくことができます。
この記事では、取り立てがストップするまでの流れや、一刻も早く取り立てをストップする方法について解説します。
「取り立てのストップ以外に弁護士に頼むメリットってあるの?」といった事や、任意整理を弁護士に頼む際の大切なポイント、受任通知についても解説します!
目次
任意整理を弁護士に依頼した際の効果
任意整理とは、裁判所を通さない私的な借金整理の方法です。
「私的な」ということは、借金の借主やその親などが個人的にお願いして、貸金業者に利息の免除などを求めることも任意整理といえます。
しかし、借主が個人的に貸金業者に頼むのと、弁護士や司法書士に任意整理を頼むのとでは、任意整理の効果が大きく異なります。
・弁護士から貸金業者に受任通知が届く
任意整理を弁護士などの法律の専門家に依頼すると、貸金業者あてに任意整理の依頼を受けた旨を通知します。これを通称「受任通知」と呼んでいます。これを受け取った貸金業者は、法律上それ以上取り立てをすることができなくなります。
借金に困っている方の多くは、しつこい取り立てに焦り、悩んでいるのではないでしょうか。受任通知によって取り立てから解放され、精神的に落ちついて今後の計画を立てることができます。
・利息の引き直し計算を行ってくれる
利息の過払いが生じているかどうか、あるとすればいくらか、弁護士に相談すれば引き直し計算をしてくれます。複数業者と取引している場合などは、個人で計算するのは大変ですので、プロに依頼しましょう。
・貸金業者の態度が違う
個人的に頼むのでは、貸金業者は交渉に応じてくれない場合が多く、話し合い応じてくれたとしても、貸金業者に有利な、一方的な合意内容になりかねません。それに対し、弁護士は任意整理のプロですので、貸金業者も好き勝手な要求はできません。
・貸金業者に面と向かい合って交渉しなくて済む
借りるときは笑顔で優しく接してくれる貸金業者ですが、支払が滞ると、とたんに怖い顔を見せてきます。そんな怖い相手に、面と向かって交渉するのは大変なことです。
弁護士に依頼すれば、貸金業者との間に入って交渉してくれますので、面と向かって交渉する必要はなくなります。
・専門家と一緒に返済計画が立てられる
借金をするときには、人によって様々な事情があります。返済に苦しくなると、一人で抱えこんでしまいがちです。プロである法律家に悩みを相談しましょう。一緒に返済計画を考えていくことで、肩の荷を降ろし、現実的な未来を描くことができます。
・5年間の間信用情報に残ってしまう
弁護士に依頼することには多くのメリットがありますが、信用情報機関に5年間、「任意整理をした」という情報が残ってしまうのは避けられません。その期間中は新規の融資が受けられなくなるなどの社会的不利益が発生します。5年経てば、登録は消えて社会的不利益もなくなります。
任意整理を弁護士に依頼する様々なメリットについて、ご理解頂けたでしょうか。
それでは、具体的にどのような流れで、任意整理を依頼してから取り立てがストップするのかを見ていきましょう。
委任から取り立てがストップするまでの流れ
①債務者(借金整理をする人)が、弁護士に正式に任意整理を依頼し、委任契約を結びます。
↓
②弁護士は、整理対象とした貸金業者や金融機関にあてて受任通知を作成します。
↓
③弁護士は、作成した受任通知を各貸金業者に送付します。
↓
④各貸金業者や金融機関は、受任通知を受け取った時点で、債務者に直接取り立てをすることができなくなります。したがって、取り立てがストップします。
通常、受任通知では、取り立てストップと同時に、取引履歴の開示請求を各賃金業者に行います。それにより、今現在の債務者の正確な債務残高を調べます。
その後和解交渉が始まるので、滞りなく進めば3ヶ月ほどで支払いが再開されます。
即日で取り立てをストップさせるためには
貸金業者から連日の督促を受けている方であれば、少しでも早く取り立てをストップしたいとお考えになることでしょう。
先ほど紹介した通り、各業者が受任通知を受け取らないと、取り立ては止まりません。そのため、弁護士が委任契約を結んでから、受任通知を発行するまでの流れを、いかに素早く行ってくれるかがポイントです。委任契約締結から1日以内に受任通知を送付する法律事務所に依頼すれば、最短で即日で取り立てをストップできます。
通常、受任通知は郵送で行うことが多いのですが、そうすると、通知が業者に届くのは翌日以降になる可能性があります。「今すぐに取り立てをストップしたい」と希望される方は、弁護士にその旨を相談してみて下さい。ケースによっては、ファックスで受任通知を送信して、即取り立てをストップできる場合があります。
一刻も早く取り立てをストップするためのポイント
・借金問題に強い法律事務所を選ぶ
借金問題に関して実績があり、委任契約から通知の発送までをスピーディに行ってくれる法律事務所を選びましょう。
・自分の希望をハッキリ伝える
債務整理に関して希望があれば、事前に弁護士に伝えましょう。先述のとおり、何も希望しなければ、受任通知は郵送送付となります。しかし、急いでほしいと希望を伝えれば、希望に合わせて柔軟に動いてくれることがあります。
・相談しやすい法律事務所に依頼する
取り立てに焦っていると、すぐにでも法律事務所に依頼したくなることでしょう。しかし、できれば事前に無料の法律相談などを利用し、数か所法律事務所を回ってみて、相談しやすい弁護士のいる事務所を選ぶことをおすすめします。
弁護士の無料相談は、相談したら必ず契約しなければならないというものではありません。無料相談で合わないと思ったら、別の弁護士に依頼することも可能です。
納得のいく債務整理をするためには、ご自身の詳しい状況や希望を弁護士にしっかり伝え、理解してもらう必要があります。ご自身にとってコミュニケーションが取りやすい弁護士を選ぶことが大切です。
少し古いデータですが、日本弁護士連合会の「市民の法的ニーズ調査報告書」(2007年実施)によれば、法律事務所に初めて法律相談に来た人のうち22%が、既に他の事務所の無料法律相談を利用したことがあると回答しました。有料法律相談を利用したことがある人(17%)を含めれば、4割近い人が複数の専門家の意見を聞いています。
出典・https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/publication/data/shimin_needs.pdf 27ページ
・費用面について確認しておく
一刻も早く取り立てをとめてもらおうと焦るあまり、費用面についてよく確認しないまま契約を締結すると、のちに契約時には聞かされていなかった費用を請求されるなど、トラブルが発生することがあります。
急いでいても、費用面の疑問は事前にしっかり確認しましょう。費用の説明が曖昧な法律事務所は避けた方がよいでしょう。
【費用面で押さえておくべきポイント】
①弁護士費用の具体的内容…着手金、定額報酬、成功報酬、手数料等の内訳や、追加費用が発生する場合はあるのかなど
②支払い方法について…分割払いや後払いが可能なのか、積立金制度があるのかなど
※積立金制度とは
弁護士と委任契約を結んでから、各業者と弁護士との話し合いがまとまり、支払いが再開されるまでの期間は、借金の返済が一時的にストップします。この期間に、積立金を行い、それを弁護士費用に充てるという制度です。
着手金としてまとまったお金を用意できない場合でも、積立金制度を利用することで任意整理を依頼できる場合があります。
※任意整理の依頼料の相場
参考までに、日弁連の「市民のための弁護士報酬の目安 [2008年度 アンケート結果版]」をご紹介します。これによれば、「引き直し計算をしても300万円の借金があり、任意整理による交渉の結果、会社員の親族が用意した200万円を一括して支払うことで解決した」という場合、着手金と報酬金の相場は以下のようになっています。
出典・https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/attorneys_fee/data/meyasu.pdf 26ページ
それでは、大切なポイントである「受任通知」について、もう少し詳しく見ていきましょう。
受任通知とは
債務者が債務整理を弁護士等に委託し、弁護士等が貸金業者に「債務整理手続きが開始しました」と通知をすることを通称「受任通知」と呼びます。
受任通知は書面でなされる必要がありますが、正式に決まった書式があるわけではありません。一般的には次の三つのことを記載するケースが多いようです。
・依頼者(名前)が任意整理の手続きを当弁護士事務所に依頼されました(債務整理手続きに入った旨の告知)
・今後、依頼者や家族への連絡や取り立ては中止し、依頼者へ連絡がある際は当職までお願いいたします(取り立て行為の禁止)
・依頼者と貴社(通知の相手方の貸金業者)との、最初からの全ての取引経過を書面にて提出願います(取引履歴の開示請求)
受任通知の効果
・取り立てが停止する
債務者が債務整理を弁護士や司法書士に委託し、弁護士等が貸金業者に通知した場合、これ以降は、貸金業者や債権回収会社は法律上、債務者個人に直接債務の取り立てや催促ができなくなります。
貸金業法21条1項9号は、債務者が任意整理を弁護士等に委託し、その通知があった場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し取り立てをすることを禁じています。「正当な場合がある取り立て」というのは、通常の取引ではほとんど考えられないので、通知が届けば取り立てが止まると考えてよいのです。
また、債権管理回収業に関する特別措置法18条8項にも同様の規定があります。
それでは、お金を借りた相手が、銀行などの金融機関の場合はどうなるのでしょうか?
銀行の場合、法律上は、上記のような規制はないのですが、現実には通知を受けると、取り立てをストップする場合がほとんどです。
従って、基本的にすべての業者からの取り立てが止まると考えて良いでしょう。
・時効中断の効果
引き直し計算の結果、過払い金が発生している可能性があることがわかった場合について考えてみましょう。
過払い金請求権も、普通の債権と同様に、10年経過すると時効にかかり、債権者に請求できなくなってしまいます。
受任の時点で、この10年の消滅時効が近づいている場合、受任通知を送付することで、催促を行ったものとして、過払い金の消滅時効を6か月間延長することができます。
より確実に時効中断を目的として受任通知を送る場合、タイトルを「受任通知書兼過払い金請求書」とし、文章中に「過払いが発生している場合は請求します」と書いて債権者に送付します。
また、時効中断を目的とする場合、相手の業者が「通知を受け取っていない」と主張することができないように、内容証明郵便で送付します。内容証明とは、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰あてに差し出されたかということを、郵便局が証明してくれるサービスのことです。
過払い金の多くは2006~2007年ごろまでに発生しており、過払い金請求権にも時効が迫っています。そのため、通知による時効中断の効果は重要です。
受任通知で取り立てだけを止められるか?
「借金はちゃんと全額払いたいから、任意整理はしたくない。でも取り立てが煩わしいのでやめてほしい」
このような場合、「取り立てだけをストップしてほしい」という通知を弁護士に出してもらうことはできるのでしょうか?
結論から言うと、「取り立てをとめるだけの依頼」は、弁護士にもよりますが、断られる可能性が高いです。
その理由としては、貸金業法や債権管理回収業に関する特別措置法による「債務者への直接の取り立て禁止」の規制は、弁護士と契約して任意整理などの債務整理を行う人を対象としているからです。
任意整理をせず、単に取り立てをとめるだけの場合、業者は法律上、取り立てをストップする義務は発生しません。そのため、通知による抑止の効果が薄いと考えられます。
「任意整理をしたら、信用情報機関にブラックリスト入りしてしまうから嫌だ」という人もいることでしょう。
確かに、5年間、新たな借り入れが受けられなくなるデメリットは発生します。しかし、任意整理により、利息や遅延損害金をカットするだけでも、かなりの負担軽減になる方が数多くいらっしゃいます。
加えて、信用情報機関に事故情報として記録されてしまうものとして「3カ月以上の滞納」があります。つまり、任意整理をしていなくても、3カ月以上支払いを遅延すれば、ブラック情報として5年間記載されるということです。
3か月滞納してブラック入りする前に、任意整理で取り立てから解放され、専門家と一緒に返済計画を練り直すことをおすすめします。
受任通知送付の際、注意すべき点
・任意整理対象に銀行が含まれる場合
銀行へ受任通知を送付すると、銀行口座が凍結されてしまうことがあります。そのため、銀行を任意整理の対象とする場合は、通知の送付前に、あらかじめ口座から預金を引き出しておく必要があります。
任意整理中でも、他の銀行で口座を開設することは可能ですので、別の銀行の口座を生活の基盤としましょう。
・ヤミ金から借りていた場合
ヤミ金から借りていた場合は、受任通知を送付しても取り立てが止まらないことがあります。ヤミ金はそもそも非合法な組織なので、法律に従わないことがあるからです。
ヤミ金から借金をしていた場合は、借金問題のベテランで、ヤミ金から借金していることを相談しても嫌がらない弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士に依頼して受任通知を出してもらおう
受任通知が貸金業者に届けば、しつこい取り立てから解放され、安心して社会生活を送ることができます。弁護士などの法律の専門家に依頼して肩の荷を降ろしましょう。
もっとも、専門家なら誰でもいいということではありません。任意整理の際の貸金業者との交渉は、専門家の技量によって合意内容が左右されます。任意整理の事案を多く受任している、任意整理を得意とする弁護士に頼むのがおすすめです。
参考サイト
即日取り立てストップできる弁護士・司法書士
https://xn--ycktb6d7a9ex94vvedy62cfo1a.com/soudan/488/
任意整理即日ストップ
https://xn--vekz61gc8cfyrzffotaf50f.com/
任意整理すると、取立てはどうなる?督促がストップするまでの流れ
http://www.protocure.org/nini_tetsuduki/toritate.html
市民の法的ニーズ調査報告書
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/publication/data/shimin_needs.pdf
任意整理の積立金制度って何? - 教えて!任意整理
http://saimu4.com/niniseiri/4239/
市民のための弁護士報酬の目安 [2008年度 アンケート結果版]
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/attorneys_fee/data/meyasu.pdf
ブラックリストにいつ載る?借金延滞で事故情報として掲載されるタイミングは?
http://sj-cashing.com/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AB%E3%81%84%E3%81%A4%E8%BC%89%E3%82%8B
貸金業協会
http://www.j-fsa.or.jp/doc/material/report/170331.pdf
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